リードは増えているのに、商談化の件数が追いついていない。営業と兼任でマーケティングを担当している方なら、心当たりがあるのではないでしょうか。問題はリードの量ではなく、獲得後の「育成」の仕組みがないことです。
Zoho Marketing Automationは、Zohoが提供するMAプラットフォームです。MA(マーケティングオートメーション)ツールは、見込み客の関心度に応じて情報を出し分け、関心が高まったタイミングで営業に引き渡す。この流れを自動化するためのものです。
この記事では、Zoho認定パートナーであるバディマーケティングのMA活用支援経験をもとに、Zoho Marketing Automationの主要機能や料金、同社が提供するZoho Campaignsとの違い、導入前に知っておくべきポイントまでを解説します。
Zoho Marketing Automationの概要
Zoho Marketing Automationは、リードの獲得から育成、評価、営業への引き渡しまでを一つのプラットフォームでカバーするMAツールです。単体で購入できるほか、「Zoho CRM Plus」「Zoho Marketing Plus」「Zoho One」といったパッケージ製品にもバンドルされています。
Zoho Marketing Automationの主な機能は以下のとおりです。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| リード獲得 | 登録フォーム、ランディングページ、ポップアップでWebサイトやSNS経由の見込み客を取り込む。Zoho CRMや外部サービスからのリード連携にも対応 |
| メールマーケティング | メルマガの作成・配信・効果測定に加え、開封やクリックなどの行動に応じた自動配信(オートレスポンダー)が可能 |
| ジャーニービルダー | 見込み客ごとに異なるシナリオを設計し、メール・SMS・WhatsAppなど複数チャネルをまたいだ育成フローを自動実行 |
| リードスコアリング | メール開封やサイト訪問などの行動データと属性情報をもとにスコアを付与し、営業が優先すべきリードを可視化 |
| Webサイト行動トラッキング | 訪問ページ、滞在時間、クリックなどの行動データを取得し、スコアリングやセグメント配信の判断材料にする |
| Zoho CRM連携 | リード情報・スコア・行動履歴をCRMと双方向で同期し、営業パイプラインへの自動送客や担当者割り当てまで連動 |
| 分析・レポート | キャンペーンの開封率・クリック率・コンバージョンを可視化し、どの施策が成果につながっているかを把握 |

以降のセクションでは、導入判断に特に関わるジャーニービルダー、リードスコアリング、Zoho CRM連携を掘り下げて解説します。
主要機能①:ジャーニー(シナリオ)でリード育成を視覚化する
Zoho Marketing Automationの中核機能がジャーニービルダーです。「資料請求した人に3日後にメールを送る → 開封したら事例紹介を送る → 開封しなかったら1週間後にリマインドする」のような分岐シナリオを、ドラッグ&ドロップの画面操作で組み立てられます。
メール以外にSMSやWhatsAppも同じジャーニー内に組み込めるため、メールを開かない相手にはSMSで通知するといったチャネルの切り替えが一つのフロー内で完結します。
なお、ジャーニーの分岐が複雑になるほど設計・検証に時間がかかります。最初は資料請求フォロー型のようなシンプルな流れから始めて、反応を見ながら分岐を増やしていくのがセオリーです。

ここではBtoBで実際に使えるジャーニーパターンを3つ紹介します。
資料請求フォロー型
資料請求をトリガーに、3日後にお礼+関連事例メール → 1週間後に活用ガイド → 2週間後にセミナー案内。最もシンプルで、最初に組むジャーニーとして適しています。

セミナー参加後フォロー型
セミナー参加者に、翌日に録画・資料のリンクを送付 → 3日後にアンケート未回答者にリマインド → 1週間後に個別相談の案内。セミナー後のフォローは手動だと抜け漏れが出やすいため、自動化の効果が出やすい場面です。

休眠リード掘り起こし型
一定期間(3か月など)メールに反応がないリードに対して、新着コンテンツや期間限定のオファーを送り、反応があればスコアをリセットして通常のナーチャリングフローに戻す。放置したままのリードをもう一度動かすのに使えます。

主要機能②:リードスコアリングで「今アプローチすべき相手」を見極める
リードスコアリングは、見込み客の行動や属性に点数をつけ、営業がアプローチすべきタイミングを可視化する機能です。Professionalプラン以上で利用でき、Standardプランには含まれていません。
加点と減点の設計
よくある設定例としては、メール開封で+5点、リンククリックで+10点、メール返信で+15点といった配点です。ここにWeb行動や属性情報のスコアを組み合わせて、自社の営業プロセスに合ったモデルを作ります。
見落とされがちなのが「減点」の設計です。メールを一定期間開封しない、Webサイトへのアクセスが途絶えるなどの非アクティブ状態に対して減点ルールを設けておかないと、過去に一度だけ資料請求した人がいつまでもスコア上位に残り続けます。加点だけのモデルではスコアが膨らむ一方になり、「ホットリード」の精度が下がる原因になります。

閾値と営業連携
スコアが一定値を超えた見込み客は、自動的にCRMの「ホットリード」リストに移し、営業担当への通知やタスク作成と連動させることができます。
閾値の設定に正解はありませんが、当社の導入支援では「まず仮説ベースで2〜3か月運用し、営業にパスしたリードの商談化率を見ながら調整する」アプローチを推奨しています。最初から完璧なモデルを作ろうとするより、実データで検証しながら精度を上げるほうが結果的に早く形になります。
ただし、スコアリングが機能するには、判定に使えるだけの行動データが必要です。Webサイトへのトラッキングコード設置、メール配信の実施、フォーム経由のリード取得が前提になるため、それらの仕組みが整っていない段階では効果は限定的です。
主要機能③:Zoho CRMとのネイティブ連携
Zoho CRMを使っている企業にとって、Zoho Marketing Automationとの連携はプランの標準機能に含まれており、追加のプラグインやAPI開発なしで設定できます。MA側でスコアが閾値を超えたリードをCRMの営業パイプラインに自動で送り、CRM側のワークフロー機能と組み合わせることで営業担当の割り当てまで自動化できます。
連携を有効にすると、MA側のリード情報(連絡先、スコア、行動履歴、タグ)がCRMの見込み客/連絡先に同期されます。逆にCRM側の商談ステータスや取引履歴もMA側で参照できるため、「既存顧客のアップセル対象者だけに新サービスの案内を送る」「失注した見込み客を再ナーチャリングのジャーニーに戻す」のようなセグメント配信が可能になります。
同期は双方向ですが、フィールドごとに「MAからCRM」「CRMからMA」「双方向」のどの方向で同期するかを個別に設定できます。たとえば「スコアはMA→CRMの一方通行、担当者はCRM→MAの一方通行」と分けることで、意図しない上書きを防げます。

Zoho Campaigns・Zoho Marketing Plusとの棲み分け
メールマーケティングを主軸としたZohoのマーケティング関連製品には、Zoho Campaigns、Zoho Marketing Automation、Zoho Marketing Plusの3つがあります。ここでは、それぞれのツールをどのように選ぶべきかを整理します。

Zoho Campaignsとの違い
Zoho Campaignsはメール配信を中心としたツールです。メルマガの作成・配信・効果測定やステップメール(自動配信)に加え、基本的なコンタクトスコアリングやワークフロービルダーも備えています。
一方のZoho Marketing Automationは、より高度なスコアリング、複雑な分岐を含むジャーニー設計、マルチチャネル対応(SMS・ソーシャル・WhatsApp)を備えた本格的なMA基盤です。メール配信機能も含まれており、Campaignsの主要機能をカバーした上で、リード育成に必要な機能を大幅に拡張した位置づけです。
判断基準はシンプルです。メール配信とベーシックなワークフローで十分ならCampaigns。CRM連携で本格的なリードスコアリングやジャーニー設計までやりたいなら、Zoho Marketing Automationが適しています。すでにCampaignsを使っているユーザーの場合、より高度なスコアリングやシナリオ設計の必要性を感じ始めたタイミングが、移行を検討する時期です。
Zoho Marketing Plusとの関係
Zoho Marketing Plusは、Zoho Marketing Automationにソーシャルメディア管理、ウェビナー、アンケートなどを加えた統合バンドルです。MA機能だけで十分なら、Zoho Marketing Automation単体契約のほうがコスト効率は良くなります。
Zoho Oneなどパッケージ製品を利用時の注意点
Zoho OneやZoho CRM Plus、Zoho Marketing PlusにはZoho CampaignsとZoho Marketing Automationの両方が含まれていますが、Zoho CRMとのネイティブ連携先として設定できるのはどちらか一方のみとなります(2026年4月時点)。
料金プランの選び方
Zoho Marketing Automationの単体購入には3つのプランがあります(2026年4月時点。1,000コンタクト基準の年間契約・税別料金)。
Standard・Professional・Enterpriseの違い
MAツールとしての本領を発揮するならProfessionalプランが基準になります。
Standardはベーシックなジャーニーとメール配信は使えますが、高度なジャーニー分岐には対応していません。Professionalプラン以上では高度な分岐条件やレポートが使えます。Enterpriseは専用IPやWebhook連携が必要な大規模運用に向いています。
| Zoho MAのプラン | Standard | Professional | Enterprise |
|---|---|---|---|
| 月額(税別・年間払い) | ¥1,710〜 | ¥2,610〜 | ¥5,310〜 |
| ユーザー上限 | 10名 | 15名 | 25名 |
| ジャーニービルダー | ベーシック+テンプレート | 高度な分岐・レポート付き | 全機能+X-RAYトレーシング |
| スコアリング | ― | ○ | ○ |
| A/Bテスト | ― | ○ | ○ |
| eコマース連携 | ― | ○ | ○ |
| Webhook連携 | ― | ― | ○ |
| 専用IP(アドオン) | ― | ― | ○ |
| 主な対象 | MAの入口 | MAの本領 | 大規模運用向け |
コンタクト数課金の仕組み
課金はコンタクト数ベースですが、すべてのコンタクトが課金対象になるわけではありません。Zoho Marketing Automationでは「マーケティング連絡先」と「非マーケティング連絡先」が区別されており、課金対象になるのはマーケティング連絡先のみです。非マーケティング連絡先は100万件まで保持できます。
注意すべきは、配信を停止したコンタクトでも、マーケティング連絡先のステータスのままであれば課金対象に含まれる点です。展示会で集めた名刺を一括インポートしたまま放置すると、配信していないコンタクトの分まで月額が上がります。対策として、一定期間(6か月など)メールに未反応のコンタクトを非マーケティング連絡先に変更する運用を月次で回すのが有効です。
導入から運用開始までの進め方
MAツールは契約してすぐに成果が出るものではありません。兼任担当者が無理なく立ち上げるための進め方を、3つのステップに分けて整理します。

ステップ1:配信基盤を整える(1〜2週目)
最初にやるべきことはMA側の設定ではなく、メール配信の土台づくりです。SPF・DKIM・DMARCのドメイン認証を設定し、送信元ドメインの信頼性を確保します。あわせてWebサイトにトラッキングコードを設置し、訪問者の行動データが取れる状態にしておきます。
Zoho CRMを使っている場合は、このタイミングでCRM連携も有効化します。フィールドマッピングと同期方向の設定を済ませ、テストデータで双方向の同期が正しく動くか検証しておきましょう。
ステップ2:メール配信とフォームで行動データを溜める(3〜8週目)
トラッキングコード設置後は、まずメルマガやお知らせメールの定期配信を始めます。並行して、資料請求やセミナー申込のフォームをZoho Marketing Automationで作成し、リードの流入経路をMA側に集約します。
この段階で重要なのは、開封率・クリック率・フォーム経由のリード数など、基本指標のベースラインを把握することです。スコアリングやジャーニーの判断基準は、この数字をもとに設計します。データなしでスコア配点やジャーニー分岐を決めても、根拠のない設計になります。
ステップ3:スコアリングとジャーニーを段階的に追加(9週目〜)
2か月ほど配信を続けて行動データが溜まったら、スコアリングモデルを設定します。ジャーニーは、前述の「資料請求フォロー型」のようなシンプルなものから始めて、1つ目が回り始めてからセミナーフォロー型や休眠掘り起こし型を追加していく。この順序が、兼任体制では最も続けやすい進め方です。
導入前に確認しておくべきポイント
リード数が少ない段階では、まずリード獲得が先
MAツールはリードを育成する仕組みです。育成する対象のリードが少なければ、ジャーニーやスコアリングを設計しても成果は出にくい現実があります。
当社の導入支援経験では、リード数が500件に満たない段階ではMAの導入よりもリード獲得の仕組みづくりを優先したほうが成果につながりやすい傾向があります。Zoho Forms、SalesIQ(チャットボット)、LandingPage(LP作成ツール)でリードの母数を溜め、スコアリングが意味を持つ規模になってからMAを本格的に取り入れるステップが妥当です。
HubSpotからの移行はUIの慣れに時間がかかる
HubSpotからZoho Marketing Automationへの移行を検討している場合、機能面ではおおむねカバーできますが、UIの設計思想がかなり異なります。HubSpotの操作に慣れた担当者がZoho製品に切り替えると、画面遷移や設定項目の場所に戸惑うことがあります。業務に支障なく使えるようになるまでの期間を1か月程度は想定しておく必要があります。
自社に合うかどうかの判断基準

Zoho CRMユーザーの場合
Zoho Marketing Automationが最も力を発揮するのは、Zoho CRMとの組み合わせです。CRM連携はプラグインやAPI設定なしでリアルタイム同期が可能で、導入から運用開始までのハードルが低い。兼任担当者がMAを始める入口として、コスト・連携の手軽さの両面で優位です。
Professionalプラン(月額¥2,610〜、税別・年間払い、2026年4月時点)は、HubSpot Marketing Hub ProfessionalやAccount Engagement、国内MAのSATORIやBowNowと比べてもエントリー価格が大幅に低い部類に入ります。
Zoho CRM以外のCRMを使っている場合
ZapierやWebhookで外部CRM連携にも対応していますが、リアルタイム同期や双方向の自動連携はZoho CRM限定の強みです。kintoneやHubSpot CRM(無料版)と組み合わせるケースでは、API連携の構築・保守コストを含めて比較検討してください。
Salesforceを業務基盤にしている企業は、Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)のほうがCRM連携の深さで有利です。コストは高くなりますが、SalesforceのレポートやダッシュボードとMA側のデータがスムーズにつながります。
HubSpotはCRM自体が無料で、Marketing Hubと同一プラットフォーム上でCRM・MA・営業支援まで一気通貫で動きます。UIの洗練度と日本語ドキュメントの充実度ではHubSpotに分があり、トラブル時に自力解決しやすい環境が整っています。
まとめ
Zoho Marketing Automationは、Zoho CRMを業務基盤にしていて、リードスコアリングとナーチャリングの仕組みを構築したい中小〜中堅企業に向いているツールです。兼任担当者でも段階的に立ち上げられるコスト感とCRM連携の手軽さが強みといえます。
まずは無料トライアルで、ジャーニービルダーとCRM連携の操作感をぜひ確認してみてください。Zohoエコシステムの導入設計やCRM連携の相談が必要な場合は、バディマーケティングのZoho One導入支援サービスをご利用ください。

