Zoho Analyticsとは?基本機能や特徴から見る他BIツールとの比較

Excelでの集計で、行数が増えるたびに動作が重くなる、ファイルのバージョン管理が追えない、マクロを組んだ担当者の異動で誰もメンテナンスできなくなる。こうした壁にぶつかってBIツールを検討し始めたものの、候補を調べるとPower BI、Looker Studio、Tableauなど様々なツールが出てきて、どれが自社に合うのか判断しきれない。BIツールの導入判断に必要なのは機能一覧ではなく、「自社の環境で実際に使えるか」という視点です。

Zohoが提供するZoho Analyticsは、データの取込・加工・可視化・共有までを1つのプラットフォームで完結できるクラウド型BIツールです。なかでもZoho CRMとのネイティブ連携が大きな特徴の1つで、Zohoエコシステムをすでに使っている会社ほどメリットが大きい設計になっています。

当社バディマーケティングはZoho認定パートナーとして、マーケティングや営業分析の効率化に向けたZoho Analyticsの導入支援を行っています。その立場から、実務での使いどころを中心に説明します。

目次

Zoho Analyticsの基本と特徴

様々なデータソースから情報を収集・可視化するZoho Analytics

ExcelやCSVを取り込んですぐにグラフが作れる

CSV/Excelファイルをアップロードすれば、そのままデータソースとして使えます。BIツール未経験の担当者でも「まず手元のExcelで試す」ができるため、既存の業務フローを大きく変えずにスタートできます。Power BIではDesktop版でのレポート作成が一般的で、本格的な分析にはDAXの習得も求められますが、Zoho Analyticsはブラウザだけで完結するため、導入時の学習コストを抑えやすくなっています。

主要なチャートタイプとピボットテーブルに対応しており、データ列をドラッグ&ドロップで配置してレポートを組み立てる操作感はExcelのピボットテーブルに近いはずです。計算列を追加して粗利率のような指標をレポートの軸にすることもできます。

既存のExcelやクラウドストレージのデータから手軽に分析開始

Zoho CRMのデータを自動で可視化できる

Zoho CRMを使っている会社にとって、ここが大きな特徴の1つです。CRMのデータが自動同期され(同期頻度はプランにより1日1回〜24回)、CRMの標準ダッシュボード(アナリティクス機能)では実現できない営業パイプラインや受注分析のダッシュボードを作れます。「月末にCRMからデータを書き出してExcelで集計する」という作業がなくなるだけでも、導入する価値があります。モジュール単位で同期対象を細かく選べるため、必要なデータだけを取り込む運用がしやすい点も実務上のメリットです。

ただし、CRM側のデータ設計が整っていることが前提です。項目定義が曖昧だったり入力ルールが形骸化していたりすると、ダッシュボードの数字が実態を反映しません。

Zoho CRM単体では表現力できない情報もZoho Analyticsで可視化可能

複数のデータソースを結合して横断分析ができる

異なるデータソースのテーブルを結合して、1つの分析用テーブルを作れます。たとえば、Zoho CRMの商談データとExcelで管理している売上実績を商談IDで結合し、「受注〜入金」までの一気通貫レポートを作るような使い方です。SQLライクなクエリテーブル機能があり、結合条件や集計ロジックを細かく指定できます。

接続先はZoho製品にとどまらず、Google Sheets、Salesforce、HubSpot、各種データベース(MySQL、PostgreSQL等)にも対応しています。公式サイトでは多数のデータコネクターが案内されており、Zoho Flow経由の連携を含めると接続先はさらに広がります。2024年9月のバージョン6.0では25以上の新しいデータコネクタが追加されました。Looker StudioがGoogleエコシステム中心、Power BIがMicrosoft環境中心であるのに対し、接続先の幅広さでは、この3ツールの中でZoho Analyticsに分があります。

Zoho製品以外にも幅広いツールに対応

レポートを自動配信できる

作成したレポートやダッシュボードを、指定した曜日・時間にメールで自動配信できます。「毎週月曜の朝9時に先週の売上サマリーを営業チームに送る」という運用が、手作業なしで回ります。

自動配信はPDF、Excel、画像形式での配信に対応しています。複数のレポートを1画面にまとめたダッシュボードはURLで社内共有でき、閲覧権限もユーザー単位で設定できるため、定期配信と常設ダッシュボードの使い分けが可能です。

例えば、毎週月曜日の朝に先週のパフォーマンスに関するメールを自動配信

料金プランと選び方

以下は年間契約・税別・2026年4月時点の情報です。

プラン無料ベーシックスタンダードプレミアム以上
月額0円2,880円5,760円13,800円〜
ユーザー数22515〜
データ行数1万行50万行100万行500万行〜
同期頻度1日1回1日8回1日24回
用途の目安操作感の確認用少人数の月次レポート複数部門での利用全社規模・大量データ
Zoho Analytics単体での料金プラン比較

上記のユーザー数は作成・編集権限を持つユーザーの上限です。閲覧専用ユーザーは別枠で追加できます(プランにより上限あり)。ユーザー追加は1人あたり月768円(年間払い)。Zoho CRM PlusZoho Oneを契約している場合、Analyticsは契約に含まれているため追加費用は不要です。

BIツールとしてはかなり低い水準から始められるため、「まず試してみたい」段階でのコスト負担が小さく、効果が見えてからプランを上げる段階的な導入がしやすい点が強みです。Zoho CRMなど他のZoho製品と組み合わせた場合のトータルコストの安さも、Zohoエコシステムならではの特徴です。

Zoho Analyticsの弱点

AIアシスタント「Zia」は日本語に非対応

Zoho Analyticsの売りの1つであるAI機能「Ask Zia」は、2026年3月時点で対応しているのは英語・スペイン語・フランス語のみです。日本語で「先月の売上トップ5は?」と聞いても動きません。英語で簡単な質問を投げることは可能なので、英語に抵抗がなければ活用の余地はあります。ただ、「AIで誰でも簡単に分析」という期待で導入すると、ギャップを感じるはずです。

大量データでの動作速度

データ行数が増えてくると、ダッシュボードの表示やレポートの再計算に時間がかかります。数万行レベルでは快適ですが、数十万行を超えるあたりからグラフの描画やフィルター切り替えの待ち時間が目立ち始めます(実際の速度はデータ構造、結合の複雑さ、ネットワーク環境によって大きく変わります)。特に、複数テーブルを結合したクエリテーブルをベースにしたレポートで影響が出やすく、ベーシックプランの50万行上限を使い切る前に、パフォーマンスが気になり始める可能性があります。

対策としては、ダッシュボードに載せるレポートを必要最小限に絞ること、集計済みのサマリーテーブルを別途作成してレポートのベースにすることが有効です。行数が増えてきたら、生データではなく集計テーブルを挟む設計に切り替えるのが現実的です。

日本語環境の成熟度が低い

Zoho製品全般にいえる傾向ですが、日本語周りの課題は複合的です。UIは基本画面こそ日本語化されているものの、設定画面やエラーメッセージの一部に英語が残っていたり、翻訳がぎこちない箇所があります。事前にトライアルで実際の画面を確認しておくのが無難です。

もう1つ深刻なのが、日本語の情報量の少なさです。Power BIなら日本語の解説記事やYouTubeの動画が豊富に見つかりますが、Zoho Analyticsはそうはいきません。困ったときに自力で解決しにくいのは、専任のデータ担当がいない中小企業にとって見過ごせないデメリットです。公式ヘルプは英語版が最も充実しているため、英語ドキュメントを読む前提で導入を検討するか、パートナーのサポート体制を確保しておくのが現実的な対策になります。

各純正ツールの分析機能と比較すると深度が劣る

基本と特徴のセクションで挙げたデータソース対応は、あくまで「接続できる」という間口の話です。Zoho内部の連携に比べると、サードパーティ連携では取り込めるデータの範囲や同期タイミングの選択肢が限られます。また、例えばGoogle Analytics4(GA4)の分析画面で利用できる項目が、サードパーティであるZoho Analyticsには取り込むことができず、同じ分析ができないといったケースがあります。「つながるけど、思ったより自由がきかない」というギャップが起きやすいので、自社が使いたいデータソースの接続品質を事前に確認しておくのが確実です。

導入でよくある失敗パターン

全部入りダッシュボードを最初から作ろうとする

「せっかくBIツールを入れるなら」と、売上・在庫・人事・マーケのデータを全部つなげた全社ダッシュボードを初期構築の目標にするケースがあります。データ整備に時間がかかりすぎて半年経ってもダッシュボードが完成しないような状況では、現場が「結局Excelのほうが早い」と離れてしまいます。まずは1部門・1レポートに絞って「Excelより便利だ」という実感を作り、そこから広げるのが定着する導入パターンです。

CRMのデータを整備せずに連携する

Zoho CRMとの連携が簡単だからこそ起きる問題です。商談のステージ定義が「提案中」と「見積もり提出済み」で実質同じ意味なのに分かれている。「受注確度」フィールドが形骸化して全件「50%」になっている。活動履歴がほとんど入力されていない。こうした状態でAnalyticsに接続しても、出てくるレポートは実態とかけ離れたものになります。「数字がおかしい」という不信感が広がると、ツールごと使われなくなるので、連携の前にCRMのデータ品質を棚卸しし、最低限の入力ルールを整えてからつなぐことが先決です。

閲覧権限の設計を後回しにする

全員に全データを見せるダッシュボードを作ってしまい、あとから「この数字は経営層だけに限定したい」となって作り直すパターンです。Zoho Analyticsにはワークスペース単位やレポート単位の共有設定がありますが、後から権限を絞ると、すでにデータを見ていた人から不満が出ます。「誰に何を見せるか」は最初に決めておいたほうが、手戻りが少ない。

Tableau・Power BI・Looker Studioとの比較

Zoho Analyticsと主要なBIツールのポジショニングマップ

Tableau

可視化の自由度という点で、Tableauは別格です。ドラッグ&ドロップの操作性はZoho Analyticsと似ていますが、チャートのカスタマイズ性やインタラクティブな表現力は段違いです。データアナリストが「見せたい分析」を形にするには最適ですが、BIツール未経験者が独力で使いこなすにはハードルが高い。

コスト面でもZoho Analyticsとは大きく異なります。ユーザー単位の課金で、利用者数に比例してコストが増える構造です。Zoho Analyticsのベーシックプラン(月額2,880円で2ユーザー)と比べると、利用者数が増えるほどコスト差が広がります。高度な分析チームがある会社には強力な選択肢ですが、「まずExcelの集計を置き換えたい」という段階の会社にはオーバースペックです。

Power BI

Zoho Analytics Formulaでは集計列の追加や条件分岐は可能ですが、DAXほどの関数の種類やメジャーの概念はありません。「月次の売上推移を見たい」レベルならZoho Analyticsで十分ですが、多次元分析を自在に組みたい局面ではPower BIのほうが向いています。

Microsoft 365環境とスムーズにつながるのも強みで、ExcelやTeamsとの接続は他ツールの追随を許しません。ただし、Desktop版で作ったレポートを他メンバーに共有するには原則Proライセンスが必要で、「無料で始めたつもりが、共有の段階でコストが発生する」点は見落としがちです。

Looker Studio

Googleエコシステムに乗っているデータをすぐにグラフにしたい用途では、Looker Studioの手軽さは際立ちます。Google広告、Googleアナリティクス、スプレッドシートとの接続が無料で使え、Webマーケティング専用のダッシュボードであれば、わざわざZoho Analyticsを選ぶ理由は薄い。

一方、Google以外のデータソースについては、MySQL・PostgreSQL等の一部データベースには公式コネクタがあるものの、SalesforceやHubSpotなどのSaaSとの接続にはサードパーティ製の有料コネクターが必要です。CRMデータとの統合や、営業データと基幹系データの横断的な分析にはあまり向いていません。

Zoho Analyticsが合う会社、合わない会社

合う可能性が高いケース

典型的なのは、従業員30〜100名規模の会社で、営業部がZoho CRMを使っていて、月次の売上報告をExcelで手作業で集計しているケース。この場合、CRMとの自動連携だけで月末の集計作業が大幅に減り、導入効果を実感しやすいといえます。

BIツールは初めてで、高度な分析よりも「見える化」が優先、月額コストを抑えてスモールスタートしたい、という条件に2つ以上心当たりがあれば、検討する価値があります。

合わない可能性が高いケース

社内のIT環境がMicrosoftやSalesforce中心で、Zoho製品を使う予定がない。数百万行規模のデータをリアルタイムに近い頻度で分析したい。DAXやSQLを使った高度なデータモデリングが必要。AI分析機能を日本語で活用したい。こうした条件が1つでも当てはまるなら、Power BIやTableauのほうが目的に合います。

まとめ

Zoho Analyticsが強いのは、Zohoエコシステム内のデータ統合、BIツール未経験者でも迷わず使える操作性、そしてトータルコストの低さです。分析の深さではPower BI、可視化の表現力ではTableau、GoogleマーケデータではLooker Studioにそれぞれ分がありますが、Zoho CRMとの連携と低コストでのスモールスタートという組み合わせは他の3ツールでは再現しにくい大きな特徴です。

Zoho CRMを使っていて、営業やマーケティングデータの可視化を低コストで始めたい会社には、Zoho Analyticsは最も手堅い選択肢です。導入の進め方や自社での活用イメージについては、バディマーケティングまでお気軽にご相談ください。

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