企業のDX推進やリモートワークの普及により、業務で使うクラウドサービスは増加傾向にあります。それに伴い、IDやパスワードの管理も複雑になっています。パスワードの使い回しや、Excel・メモ帳での管理、退職者アカウントの削除漏れなどは、情報漏えいや不正アクセスのリスクにつながりかねません。
本記事では、パスワード管理の課題解決に役立つクラウド型パスワードマネージャー「Zoho Vault(ゾーホー ボルト)」について、基本機能や特長をわかりやすく解説します。
Zoho Vaultとは?

Zoho Vaultは、Zohoが提供するクラウド型のパスワードマネージャーです。個人での利用はもちろん、チームや組織全体でのパスワード一元管理にも対応しており、高いセキュリティと使いやすさを両立しています。
大きな特長のひとつは、AES-256ビット暗号化とゼロ知識アーキテクチャを採用している点です。ゼロ知識アーキテクチャとは、ユーザーのマスターパスワードがサーバーに送信されず、ユーザー本人だけが保持する仕組みを指します。そのため、Zoho側であっても保存されたパスワード情報にアクセスできない設計となっており、高い安全性が確保されています。保存されたパスワードや機密情報は、強力な暗号化方式であるAES-256によって保護されます。
さらに、無料プランでも保存件数に制限がないため、まずは個人利用で試し、必要に応じてチーム利用へスムーズに広げられる点も魅力です。
Zoho Vaultの基本機能
Zoho Vaultには、パスワード管理をより安全かつ効率的にするための機能が豊富に備わっています。
ここでは、主要な機能をご紹介します。
パスワードの安全な保存と自動入力
パスワードやログイン情報、機密メモなどをAES 256暗号化によって保護された保管庫に無制限で保存できます。ブラウザ拡張機能(Chrome、Firefox、Edge、Safari対応)を使えばログイン時にID・パスワードが自動入力されるため、複雑なパスワードを記憶する必要がありません。iOS・Androidアプリにも対応しており、デバイスを問わずどこからでもアクセス可能です。パスワードジェネレーター機能を使えば、推測されにくい強力なパスワードを自動生成することも可能です。

チーム・組織でのセキュアなパスワード共有
暗号化された状態でパスワードを共有でき、「閲覧のみ」「編集可能」「管理者権限」など権限を細かく設定できます。プランによっては期限付きアクセスにも対応しているため、外部パートナーへの一時的な共有も安心です。退職者や異動者に対するアクセス権の変更・停止も管理しやすく、不要なアクセスの残存リスクを抑えやすくなります。

シングルサインオン(SSO)と多要素認証(MFA)
エンタープライズプランでは、シングルサインオン(SSO)機能を利用できます。一度ログインするだけで連携する複数のクラウドアプリにパスワードなしでアクセスでき、ユーザーの利便性向上とIT管理者の負荷軽減を実現します。Active DirectoryやMicrosoft Entra IDなど、主要なディレクトリサービスとの連携にも対応しています。さらに、Zoho独自の認証アプリ「Zoho OneAuth」との統合による多要素認証(MFA)や、パスキー(Passkey)によるパスワードレス認証にも対応しており、不正アクセスのリスク軽減にもつながります。
監査・コンプライアンス機能
管理者にとって心強いのが、監査・コンプライアンス機能です。すべてのパスワード操作がリアルタイムで記録され、誰がいつどのパスワードにアクセスしたかを詳細に追跡できます。不審なアクティビティが検知された場合にはメールで即時通知が届き、IP制限機能によるアクセス制御も可能です。

Zoho Vaultの活用シーン
Zoho Vaultは、日常業務のさまざまなシーンで「セキュリティ強化」と「管理負荷の軽減」を同時に実現できるツールです。ここでは、具体的な活用シーンを紹介します。
リモートワーク環境のセキュリティ強化
リモートワークでは、自宅や外出先から社内システムへアクセスする機会が増えるため、パスワード管理の重要性が高まります。Zoho Vaultを使えば、どこからでも安全にパスワードへアクセスできるうえ、多要素認証(MFA)と組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。場所に縛られない働き方でも、セキュリティレベルの維持につながります。
IT管理者の負担軽減
社内で頻発しがちな「パスワードを忘れた」という問い合わせは、IT部門の大きな負担になりがちです。Zoho VaultとSSO(シングルサインオン)を組み合わせることで、ユーザーが管理するパスワードは実質1つに集約されます。その結果、問い合わせ対応の負担が軽減され、IT担当者はコア業務に集中しやすくなります。
外部パートナーとの安全な情報共有
代理店や業務委託先など、外部パートナーとアカウント情報を共有する場面でもZoho Vaultは有効です。エンタープライズプランであれば、アクセス権限から有効期限まで細かく設定できるため、「必要な人に、必要な期間だけ」安全に情報を共有できます。
スタートアップ・中小企業のセキュリティ基盤づくり
限られたリソースでセキュリティ対策を進めたい企業にとっても、Zoho Vaultは導入しやすい選択肢です。無料プランから始めて、チームの拡大や事業成長にあわせて段階的に機能を拡張できるため、無理のない形でセキュリティ体制を整えやすくなります。
Zoho Vaultの料金プラン
Zoho Vaultは、利用規模やニーズに応じた複数の料金プランを用意しています。無料プランは個人利用に適しており、保存数に制限はありません。スタンダードプランではチーム共有やGoogle Workspace、Microsoft 365との連携に対応し、プロフェッショナルプラン(最小5ユーザー以上〜)では緊急時アクセスやパスワード侵害アラートなど、より高度な機能を利用できます。さらに、エンタープライズプラン(最小5ユーザー以上〜)では、SSOやActive Directory連携、SIEM連携など、大規模組織向けの機能も備えています。
| プラン名 | 月額料金(年間払い) | 特長 |
| スタンダード | ¥108 / ユーザー | コンパクトなチーム利用にも対応 |
| プロフェッショナル | ¥540 / ユーザー | より高度な管理機能にも対応 ※最小5ユーザー以上 |
| エンタープライズ | ¥860 / ユーザー | SSOなど大規模運用向けにも対応 ※最小5ユーザー以上 |
また、Zohoの統合プラットフォームであるZoho Oneを利用すれば、Zoho CRMをはじめ、マーケティング、営業支援、カスタマーサポートなどの各種アプリケーションとあわせて、Zoho Vaultもまとめて活用できます。業務アプリケーションとパスワード管理を同じZoho環境で一元化できるため、運用負荷を抑えながら、より効率的で安全な管理体制を構築しやすい点も魅力です。
まとめ
パスワード管理は、企業のセキュリティ対策において基本となる領域である一方、見落とされやすい課題のひとつでもあります。Zoho Vaultは、AES-256暗号化やゼロ知識アーキテクチャによる高いセキュリティに加え、SSO・MFAといった認証機能、柔軟な共有設定や監査機能を備えており、組織におけるパスワード管理の見直しや運用改善に役立つツールです。
複雑化する業務環境のなかで、パスワード管理を属人的な運用に頼り続けることは、運用面でもセキュリティ面でも大きなリスクになりかねません。安全性と利便性を両立しながら、パスワード管理のあり方を見直すことは、組織全体のセキュリティ強化につながります。Zoho Vaultは、その第一歩として検討しやすい選択肢のひとつです。

