中堅・中小企業こそZoho CRM〜IPA・経産省の最新報告書に学ぶ、フルスクラッチではなくSaaS型CRMが最適な理由〜

営業活動のデジタル化や顧客対応の高度化が求められる中、中堅・中小企業にとってCRM(顧客関係管理)システムの導入は避けて通れない課題となっています。特に属人的な営業から脱却し、再現性ある仕組みで売上を伸ばすためには、業務フローとデータを整理・標準化することが欠かせません。

しかし「自社の業務に合ったCRMを」と考えるあまり、ゼロからのシステム開発(フルスクラッチ)に踏み出そうとする企業も見られます。これは一見合理的に思えて、実は長期的なリスクやコストを抱える危険な選択肢になりかねません。

本記事では、レポートの知見をもとにフルスクラッチ開発のリスクを整理しながら、SaaS型CRMの有効性を明らかにし、数ある選択肢の中でも実績・コスパ・柔軟性に優れた「Zoho CRMを中心に解説します。

目次

フルスクラッチ開発の落とし穴とは?

2025年5月に公表されたIPA(情報処理推進機構)および経済産業省による「レガシーシステムの刷新に向けた提言」では、中堅・中小企業のIT基盤刷新においてフルスクラッチ開発の限界と、パッケージ・SaaS活用の重要性が明確に指摘されました。なかでも「自社開発システム」がその原因の多くを占めているのです。
(参考リンク https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html)

自社の要望にあわせてスクラッチ開発を行った結果、以下のような課題が生じやすくなります。

  • 業務担当者の要望をすべて取り込んでしまい、結果的に複雑化
  • 「現行通り」の踏襲にこだわり、非効率なプロセスまで温存
  • 担当者が退職すると中身が分からず、保守不能に(属人化)
  • アップデートや外部連携に多大なコストが発生

こうした問題の背景には、要件定義や設計段階での全体最適視点の欠如、技術選定の硬直性、組織内の情報共有不足などが複合的に関与しています。また、構築当時は有効だった仕様が5年後、10年後には時代遅れとなり、アップグレードコストや再構築の判断に迫られるという「サンクコストの罠」も重大な課題です。

政府レポートでは、特に中堅・中小企業においてはスクラッチ開発ではなく、標準パッケージやSaaS製品の活用が推奨されています。技術的・人的リソースが限られる企業にとっては、メンテナンスやスケーラビリティの観点でもSaaS活用が合理的な選択と言えるでしょう。

政府レポートが示す「スクラッチ開発の限界」とは

経済産業省およびIPAの報告書では、以下のような実態と提言がまとめられています。

  • 多くの企業で基幹業務システムがレガシー化しており、DXの阻害要因となっている(2025年の崖)
  • スクラッチ開発による属人性の高いシステムは維持コストが高く、構造理解の継承も困難
  • ベンダーロックイン、ブラックボックス化により、稼働しているが改修不能なシステムが存在
  • システム標準化、パッケージ導入、業務プロセスの見直しを含めた全社的なIT刷新が不可欠

また、委員会の報告書では「経営層のIT理解不足が根本要因となり、適切な投資判断がなされない」ことも課題として挙げられています。中小企業においては特に、現場任せでITを構築した結果、全体最適からかけ離れたシステム構造が温存される傾向が強いと指摘されています。

このような背景から、「再び“レガシー”を生まない設計思想」が重視されており、初期投資が低く、拡張性と保守性に優れたクラウドサービスの活用が現実的な方策とされています。

Zoho CRMが中堅・中小企業に最適な理由

1. Salesforce級の基本機能を低価格で

Zoho CRMは、見込み客管理、商談管理、活動履歴、レポート・ダッシュボードなど、営業・マーケティングに必要な機能を標準装備。Salesforceと比較しても遜色ない構成でありながら、月額4,800円/ユーザー(Enterprise)と圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。

また、上位プランでのアクセス管理(役職階層による制限)、マルチチャネル対応(電話・チャット・メール・SNS)、SLA管理など、エンタープライズに求められる要件にも対応しています。

2. ノーコードで柔軟なカスタマイズが可能

Zoho CRMは柔軟なカスタマイズ性で、さまざまな業務要件にフィットします。タブ(モジュール)の追加や項目のカスタム、ページレイアウトの編集などがノーコードで実施可能。Delugeという独自スクリプトで高度な自動化も構築できます。

また、カスタム関数、Webhook連携、ワークフロートリガー、Blueprint(業務フロー管理)などを組み合わせることで、業務に最適化されたCRM構成が可能です。

3. 他Zoho製品や外部ツールとのスムーズな連携

Zoho Campaigns(メールマーケティング)、SalesIQ(Webチャット)など、他のZoho製品とは標準連携。また、Google Workspace、Slack、Zoom、Microsoft Teamsなどの外部サービスともAPI連携やWebhookで接続できます。

さらに、Zoho Flow(iPaaS)を活用すれば、ノーコードで複数ツール間の業務連携を自動化できます。これにより、情報が分散せず、一元的な顧客体験を実現できます。

4. AI機能「Zia」で営業活動を支援

Zoho CRMには、AIアシスタント「Zia」が搭載されており、商談の成功確度予測や活動提案、メールの感情分析などを自動で行ってくれます。Ziaはユーザーの操作ログや過去データを元に学習し、タイミングよく通知を行うため、営業現場の判断を支援します。

なお、Ziaの一部機能については現在日本語環境での強化が進められており、今後のアップデートによりさらなる活用が期待されます。

5. セキュリティと信頼性の両立

Zoho CRMは、セキュリティ面でも高い評価を受けており、情報資産を取り扱う企業にとって安心して導入できる環境が整っています。通信の暗号化、ユーザー権限の細かい設定、多要素認証(MFA)など、実務に直結するセキュリティ要件に対応。

さらに、Zohoは欧州GDPRや日本の個人情報保護法にも準拠しており、国際的なセキュリティ基準を満たす体制を整えています。SaaS基盤そのものの堅牢性に加えて、アクセスログや監査証跡などの管理機能も備えており、万が一の情報漏えいや不正アクセスにも対応可能な仕組みが構築されています。

フルスクラッチせずともここまでできる!現場カスタマイズ事例

1. 案件データベースの業務最適化と一元管理

Zoho CRM上に「進捗管理」などのカスタムタブを作成し、案件ごとに納期、担当者、外注先、ステータスといった情報を記録します。これにより、営業進捗と制作現場の情報が一体化され、Zoho AnalyticsやGoogleスプレッドシートへの自動出力を通じて外部関係者との連携も実現します。CRMを主軸としながら、業務横断的なデータハブとして活用することで、業務全体の可視化と情報共有を促進できます。

2. WebフォームやCSV取込時の自動重複チェック

Webフォーム経由の登録時に、電話番号・メールアドレスで重複を自動検知。人為的なミスやダブり登録を防ぎ、クリーンなデータベースを維持できます。外部データ連携時やCSVインポート時にも自動重複検出が可能で、例えば展示会で収集したCSVをインポートする際も、事前の検証ロジックにより二重登録を未然に防ぎます。これにより営業活動の精度が保たれ、無駄な接触や誤対応のリスクを軽減します。

3. 見積承認フローの完全自動化

見積書の作成から上司への承認依頼、PDF化、営業担当者への通知までをZoho CRMのワークフローと通知機能を活用して一気通貫に自動化します。承認済PDFの自動生成や社内通知との組み合わせにより、承認プロセスのスピードと透明性が大幅に向上します。さらに、監査ログの自動保存によって内部統制の強化にもつながります。

4. 商談の停滞や失注リスクへのアラート自動通知

商談のステージが一定期間更新されていない、または最終接触から時間が経過している案件について、Slackなどのコミュニケーションツールを通じて担当者やマネージャーにアラートを自動送信します。対応漏れやフェーズ停滞を防止し、マネジメント層による商談への迅速な介入を支援します。タイムリーな通知により、営業活動のスピードと精度が向上します。

5. 複数部門・外部パートナーとの連携自動化

Zoho FlowやWebhookを活用し、CRM上の特定アクションをトリガーとして、他部門や外部システムとの連携を自動化します。たとえば、商談フェーズが進んだタイミングで契約部門に通知を送信したり、契約完了後に会計システムへデータを送信したりすることで、部門をまたいだ業務連携を効率化します。フルスクラッチ開発を行わずとも、組織横断のデジタルプロセスを構築できます。

CRMは「イチから作る」より「使いこなす」時代へ

DXを推進する過程で、本来は手段であるべきITシステムが目的化してしまうケースは少なくありません。しかし、本当に重要なのは「仕組みをつくること」ではなく、「継続的に売上を伸ばすこと」です。CRMは現場の生産性を高め、成果を出すための支援ツールであり、事業成長を支える戦略的な基盤となります。

Zoho CRMは、高機能・柔軟性・コストパフォーマンスの3拍子が揃った、中堅・中小企業にとって最適なSaaS型CRMです。スクラッチ開発に伴う過剰なコストや開発リスクを回避しつつ、自社の業務プロセスにフィットした仕組みを、段階的かつ短期間で構築できます。

Zoho CRMの導入・活用をご検討の方は、Zoho認定パートナーであるバディマーケティングまでお気軽にお問い合わせください。貴社の業務内容に合わせた導入支援・運用設計・連携支援をご提案いたします。

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